不動産の鑑定依頼

江戸っ子は同じ物件であっても安く買ったとか、競売物件を買ったと噂されるのを嫌がります。個人の名前で応札する代わりに、割り高になってもいったん業者に買わせたあとで、業者から買い取ることで、競売物件ではないというポーズをとる。一方、浪花っ子は同じ物件を買うのならば、他人より少しでも安く買って、安く買ったことを隣近所に触れて回るのではないだろうか。いま、顧客のほとんどが金融機関であり、不動産鑑定依頼の半分以上が不良債権がらみである。鑑定する不動産は不良債権となった担保債権ばかりで、それらは金融機関にとっては見たくもない物件だ。不動産鑑定会社に八つ当たりをされても困るが、不良債権化した不動産の鑑定依頼をする金融機関は、鑑定料の支払いを「泥棒に追い銭」のように感じるのではないだろうか。その腹立たしさは、立場が違う私にもよくわかる。融資前によく調べればよかったのにといっても、その頃の融資担当者は異動してしまっているはずで、現在の担当者に罪はない。かといって私どもは、不動産鑑定料をタダにしますともいえない。悩ましいところだ。金融庁や検察・警察の目が厳しくなって、中立の「第三者」の鑑定価格に基づいた事務処理をしないと、背任などの罪を問われかねないので、いまの金融機関は鑑定にかかる費用を必要経費と思っている。特に信金・信組などの地域金融機関では、いまさら不動産鑑定士を自社内に抱えるより、アウトソーシングしたほうが経営的に有利なようである。価格の下落時期が今回のバブル崩壊後のように長期問、深く、広範囲にわたると、競売申し立て物件はアッという間に増加する。バブル期の競売申し立ての原因を見ていると、単純に債務者が経済的に返済不能になったこと以外に、融資時期に金融機関が不動産の購入を斡旋し、債務者である所有者に高値の物件を押しつけたことで、債務者と責任のなすり合いから感情的にこじれてしまったケースがままあった。金融機関が不動産仲介業を行なったことも原因だ。バブル崩壊後、債務者は返済不能に陥ると、それなりに不動産を売却しようと努力しただろうが、価格の大幅な値下がりの中で、なかなか売買価格の折り合いがつかず、売却後の生活を考えると踏み切れないこともあったろう。同じ頃、金融機関は最初のうちは融資時のいきさつや長年の取引関係もあって、あまり強硬な手段に出られなかったが、不良債権が積み重なってきて、自分たちの経営を押し潰しそうになると、競売による不良債権処理をどんどんしていかなければならなくなった。

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